上林不動尊の千駄焼き

期 日   2月立春の日

場 所   上林大通り坂上の不動尊

 

これは寒あけを告げる春祭りで、立春の日に御嶽教中正講社の

行者が中心になって行うものであります。起源は万延元年(1860年)頃より始められたと言われております。この講は岩巣護講でその後中正講社になりました。

 

中正講社の修験者たちは、水行、寒行をつみ、木曾の御嶽山へ

修行に行き、家内安全、悪魔払い、病気平癒、豊作、雨ごいなどを願い、祈祷する行事であります。祈祷中は、白衣一枚で行われています。まず小寒の日を行初めとし、毎晩30日の間、上条のお不動さんへ寒行に行きます。白装束にほうかんむり、肩から掛けた鈴を鳴らしながら、雪道を素足に、草鞋で歩きます。

 

当日午後1時半、渋温泉の行者宿より出発、行者さんがふんした猿田彦命がおん前だちとなり、刀やたいまつを持ち、次に須佐之男命、手刀男命、天小屋根命、赤や青のお面をかむり、装束をつけ、町の所々に張られたしめ縄を、刀で切りながら進んでいきます。これは道なき道を切り開いたと言われています。

 

行者の後から沓野区の役人一同が、正装し賑々しく通って行きます。時々行者のならすホラ貝が響きます。持って行く旗は何本もあり(東方降三世夜叉明王)(南方軍茶利夜叉明王)(西方大威徳夜叉明王)(北方金剛夜叉明王(中央大日大聖不動明王)と墨くろぐろと書かれ、道中祭りを引き立てております。

 

 

 

上林不動尊へ着くと、お堂の中でお経が上げられます。湯加持(湯の花行事)境内の大釜に沸かした湯を、お経を上げながら鎮め、熊笹の葉をひたして見物人にふりかけます。

この笹をもらって家に下げておくと、家畜が病気にかからないと言われています。

 

鍬加持

焼いた鍬を内山紙二枚でくるみ、素手でもつ 加持にて、人々の厄よけ祈願を行うものであります。

 

千駄焼き

これが千駄焼きの行で、馬千駄に積まれた薪を燃やすの意味で燃えくすぶる火の上を指で九字をきり、素足の行者達の勇壮な

火渡りが行われます。これが一番の荒行で、厄除け、病気、悪魔払い、豊作などが祈祷されます。

 

全ての行事がすむと、お供えしたひし型餅の護符や、ミカン、

ピーナツなどが人々にまかれます。中には護神剣の小さな包みもあります。この護神剣は三又剣と言ってこれを拾うと願い事が全て叶うと言われています。

これらの護符は家に持ち帰り、皆で食べると一年中風邪を引かないと言われています。杉の木立に囲まれて、常は上林不動尊もこの日ばかりは賑わいます。この祭りがすむと、あたりは春の気配が感じられてまいります。